FC2BBS

50123
「あかきの」拝受 - hazanyosi
2025/09/09 (Tue) 22:11:54
山口県宇部市で発行されている「あかきの」第12号を拝受しました。いつもありがとうございます。
掌編連載の木澤千さんの「ひぐらし亭春秋」はいつも楽しみながら読ませていています。今号も「絶筆五首」と「したきりすずめ」の二編が掲載されています。これは第七期「九州文学」で発表されていたを改稿されたものです。どちらも小味の利いた作品です。掌編をきっかり書ける人は何を書かせてもうまいですよね。基本(起承転結)がしっかりしているから安心して読めます。この二つの作品の他に木澤さんは「占い」という短編を発表しています。佳品です。会社を定年して妻を亡くした「彼」が寂しさを忘れる為に近くを散歩していて公園で五歳の子供に出会うのです。子供の母親はパチンコに興じていて「じいちゃん」と「彼」に呼びかけて二人はお互いの孤独から交友がはじまるのですね。そして子供を彼は自分の家に連れて行くのですが、一方では母親は自分の子供が誘拐されたと警察に連絡し、そして誘拐犯に「彼」は仕立て上げられるのです。「彼」は新聞の占いをいつも読んでいて、その日までの出来事が不思議と当たるのですよね。それがこの作品のモチーフとなっています。まあ占いを「彼」が信じている訳でもないのですが、そういう事って日常よくありますよね。ここでは気の弱い「彼」という人間が丁寧に描かれていて感動しました。
他には手記で「私の老々介護」(野村英昭さん)に心惹かれました。「心に残る人」(高瀬啓子さん)の中にこういう人生訓めいたものが人の口で語られていましたのでメモしました。「人には三命がある。運命・職名・寿命。三命は逆らわずに受け入れることが大切」と。初めて目にしたのですが、なるほどと考えさせられました。
「照葉樹」拝受 - hazanyosi
2025/09/06 (Sat) 10:30:14
「照葉樹」第28号を拝受しました。
主宰の水木怜さんは心臓の手術、低血圧で倒れて肋骨を骨折されて編集に苦労されたそうですね。満身創痍のなかで発行、感慨深いものがると思います。小生にも似たような経験がありますのでその気持ち理解できます。同人雑誌とはいえ、約束事はきちんと守りたいものですよね。それが同人に対する信頼感となってゆくのですよね。なかには確かに無理解な人もいますけど、そんな人はどこの、何の世界にもいますよね。
作比では水木怜さんの「ストーリー・上」が自分史というか私小説的なできばえでリアリティーを感じました。これはどうやら連載になるようですね。小生と同じく彼女も後期高齢者、ぼつぼつ人生の締めに取り組むのかな? 最後には自分を遺したいですよね。生きた証を! 小生も構想を練っているところです。でも、客観的に描けるかどうかが問題ですね。「ストーリー・上」はそういう意味では自分を客観視しているように感じますが、これから先、どうなるか楽しみですね。「自分史」がいつの間にか「自慢史」になるのですよね。以前に自分史の講座を受け持ったことがあるのですけど、書かせてみるとみんな「自分史」ならぬ「自慢史」に自分を美化するのですよね。そういう気持ちは解らないこともありませんが読ませられる方は感動はしませんよね。小生がひねくれもの?
他に読むべき作品はありませんでした。
「龍舌蘭」拝受 - hazanyosi
2025/09/04 (Thu) 13:49:22
「龍舌蘭」215号を岡林さんよりご恵贈いただきました。「龍舌蘭」は「九州文学」同じく昭和13年の創刊ですね。まもなく90年に到達します。何回か挫折しかけては続刊していまして、岡林さんになってからは順調に年3回発行なさっています。小生も黒木淳吉さんの追悼文を頼まれて書いた経緯がありまして、あれ以来ずっと送っていただいております。
今号は鮒田トトさんの「揚々」が再掲されています。彼女は若くしてお亡くなりになっていますが期待される書き手でした。九州芸術祭にも確か佳作になられていたと記憶しています。「拗拗」もそれに劣らぬ快作ですね。特に一気に畳み込んでいくような文章のキレ味がいいですね。これは彼女独特のものでしょう。「拗拗」の最後が少し尻切れに終わっているように思いました。もう一工夫あれば更にいい作品になったことでしょうね。
他に鳥海美幸さんの「カメ」はうまいですね。山内スリンさんの「鬼神」のような小手先のうまさはないけど初々しさに惹かれました。この方の作品を読むのは初めてです。その所為かも知れませんが、かなり年配になってから書き始められたのでは?
随筆では岡林稔さんの「この暑さの中で悶々と」が同誌に掲載されていた特攻隊の心情に対して問題提起されていて考えさせられました。これは「九州文学」の火野葦平さんを戦争作家とレッテル通りに認めるべきかどうかの問題と同じだと思います。葦平さんはヒューマニストですよ、と小生は思っていまして、そのことを岡林さんにメールしたら彼も小生の意見に賛成して下さいました。そうです、あの時代ですからね。葦平さんも軍の検閲に精一杯に抵抗したような箇所を「麦と兵隊」で探すことができたこと、これも同意見でした。暗号のようなものですよね。特攻隊に組み込まれた人も本心から死んでいった訳ではないでしょう。それを美化した作品もあるのですよね。
同人の足立正男さん、お亡くなりになったのですね。謹んで哀悼の意を表します。



「アビラ」拝受 - hazanyosi
2025/08/28 (Thu) 13:57:53
宮崎県の後藤光治さんより個人詩集「アビラ」23号を拝受しました。彼の詩作品は抒情的で非常に入り込みやすいですね。彼の作品からヒントを得て小説に書いたこともあります。今号にも「ムカデ」「猫」「柱時計」という作品があります。どれも小さい頃住んでいた実家を思いだします。実家は今は他人が住んでいてもう帰ることもできませんが、それだけに余計に思い出すのです。ムカデもいたしヤジラメ(青大将のこと)も実家の天井裏に棲んでいましたね。田舎の家ですから隙間だらけのわりかし大きな家でした。そうそう夏人ると燕も家の中に入ってきて巣を作っていました。その燕の巣を狙ってヤジラメが這って来ては畳の上に落ちたりしていました。ヤジラメって不器用なんですね。ドターッとよく落ちて小生たちをびっくりさせていました。人間に危害は加えないけど気持ち悪かったですよ。今思うとヤジラメも我が家の住人の一人だったように思います。そんな光景が後藤光治さんの作品のなかにあって懐かしさを思い起こさせてくれます。お互いにそういう時代を生きてきたのですね。涙がこぼれます。
小生、心房細動でカテーテルアブレーションという手術を受けてまいりました。二時間ばかりの手術だったのですが、調子は上々です。三泊四日で退院したきたのですが、心臓の手術も簡単にできるようになったのですね。不整脈がなくなりました。我が人生ももう残すところ後わずかでしょうが、まだ書き遺しておきたいことがいくつがあります。それらの作品に現在取り組んでいます。車の免許証も返上し、行動も狭められましたが運動も兼ねて取材等の移動は電動自転車で。自分でも驚くほど日焼けしました。さあラストスパートだ~(笑)
まほろば賞 - hazanyosi
2025/08/03 (Sun) 11:24:08
第19回まほろば賞は井本元義さんの「ルーアンの復讐に決定したそうです。おめでとうございます。井本さんは二度目の受賞です。一度目は「季刊午前」に発表したものでしたが今回は「海」に出した作品です。よかったですね。彼との約束で小生も「海鮮料理」にありつけました。表彰式は来年3月とのこと。九州で全国同人雑誌大会が行われる場で。場所は決まっていませんがたぶん福岡市でしょうか。まずはおめでたい。
フォークナー他 - hazanyosi
2025/07/18 (Fri) 14:03:11
遅まきながら最近は外国文学に興味を抱いています。読みだしたらとても新鮮な気分になれます。早く気付くべきでした。
フォークナーの「エミリーのバラ」「熊」、ヘミングウエイの「老人と海」「殺し屋」「インデアン部落」、モームの「レッド」、モーパッサンの「首飾り」、オーヘンリーの「二十年後に」、ペネットの「雨傘」、アンダスンの「手」、ハックスレイの「ジョコンダの微笑」、マークトウインの「ハックルベリーフィンの冒険」等を手当たりしだいに読みました。長編は根気が続いませんのでもっぱら短編です。
中でもフォークナーの作品が一番気に入りました。過去の重圧に喘ぐ南部の衰頽と墜落と虚偽と暴力を執拗なまでに描き出してきた彼の作品には共鳴するところがあります。しばらく時間を置いてまた挑戦してみたいです。


「全作家」拝受 - hazanyosi
2025/07/18 (Fri) 13:14:38
「全作家」第126号を拝受しました。今号は掌編小説特集号です。新しい編集体制になって三冊目?かな。順調に進展していますね。二十二人同人が執筆しています。この中に知り合いの森田髙志さんの作品もあります。「リモートワーク」というタイトルの小説ですが、ゲーム感覚で田植えをしている光景がユニークです。ひょっとすると東京にいながら田植えできるのではないかと暗示しています。これは可能かもしれませんね。将来はそうなってゆくのではないかと思いますよ。AIという妙な機械も開発されていることだし、そういう時代になってゆくのではないですか。小説でももう人間が呻吟しながら書くと言う時代は過ぎてAIに書かせる時代に変り始めているのかな? 芥川賞も直木賞も今回は該当作なしだったみたいで、いよいよ人間が描くものがつまらなくなっているのではないのでしょうか?
そうなってほしいとは思いませんが、そういう時代に来ているのではと思うと、人間がつまらなく思えて仕方がない。人間って一体何なのでしょうね。
季刊「遠近」拝受 - hazanyosi
2025/07/08 (Tue) 10:43:26
季刊「遠近」第90号を拝受しました。
粒ぞろいの作品が多いですね。レベルの高さを窺い知ることができます。九州在住者も同人に入っていらっしゃるようですね。同人数十四人なのに確実に季刊発行を続けていられます。
作品もさることながら「サンゾー書評がおもしろいです。多少口の悪い言い方で書評していますが、ホンネですよね。同人誌に褒められるような作品はなかなか集まらないですよね。「何もない」「面白くない」「リアリティーが感じられない」「ナンセンスだ」と酷評するのが定番のようです。この人にかかったらヒッキャカメッチャカです。毒舌もここまでくれば喜劇ですよね。「海峡派」さんの批評が取り上げられていますが、気の毒になるくらい。ここで紹介したいと思ったがやめました。徹底してますね。サンゾーという人は何者でしょうか?
「詩と眞實」拝受 - hazanyosi
2025/07/06 (Sun) 10:09:00
「詩と眞實」NO913を拝受しました。送り主の井本元義さんの小説「黒い川」は福岡市の御笠川周辺に住む大学生の経済的に苦しい時代の生活を虚無感を重厚な筆致で描いた純文学ですね。小生たち世代、昭和の中盤から終盤にかけての流行した作品の流れをくんでいて、言い方によっては古い作品ですが、個人的には好きな作品です。「いつか汽笛鳴らして」とか「誰かが触った」とか、あの頃を彷彿させます。時代は待ってくれないのでしょうか。今はもう同誌の「立春」(吉田真紀さん)のような軽いタッチの作品が主流ですもんね。前進したのか後退したのか小生には分かりかねますが、やはり昭和の作品の方が良かったと思います。いくら古いと言われても重たい作品に人生を感じとることができます。「黒い川」は秀作ですよ。
「文芸思潮」刊行 - hazanyosi
2025/06/29 (Sun) 22:01:36
「文芸思潮」第96号が発行されました。
今号は同人雑誌優秀賞「まほろば賞」候補の作品が五扁掲載されています。五編の中には「海」同人の井本元義さんの「ルーアンの復讐」がノミネートされています。これは関東大震災のどさくさに紛れて憲兵の甘粕正彦大尉が無政府主義者の大杉栄とその愛人(伊藤野枝)と子供を殺害すると言う残虐な事件を取り扱ったものです。甘粕は一応裁判で刑をうけるのですが三年で釈放されてパリに渡るのですが、そこには林という大杉と仲のよかった画家がいて、彼が大杉の仇討ちを試みるという大胆な筋書きです。林という画家の視点で描かれていて、サスペンスに富んだ作品になっています。読み応えがありました。時代背景、事件そのものの参考文献も多く、よく調べられていますね。おそらく井本さんの「ルーアンの復讐」が受賞と思いますが、彼は一度「まほろば賞」を受賞しているのですよね。ですからここをどう評価するか、分かれるでしょうね。同じ人に二度もやることが可能かな?というのが小生の意見です。