「絵合せ」第10号が発刊になりました。
まず最初に同人の野沢薫子さんがお亡くなりになりましたことを報告しなければなりませんね。野沢さんは有能な書き手でした。「長崎文学」の同人でもありましたが事情があって山梨県に引っ越しなさっていました。平成15年度には第34回の九州芸術祭では「窓ごしの風景」で長崎県優秀賞、全体では佳作に入賞されていましたね。また、第七期「九州文学」では年間優秀賞も受賞されています。庶民生活を描いた歴史小説にも造詣が深く、数編発表されていました。まだまだ書ける人だったのに残念ですね。
今号で発表なさった「ムジナの里」が彼女の遺作となりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
「ムジナの里」はいつものキレの良さは影を潜めていますが、体調も思わしくなかったのでしょうか。ムジナ的人間は自分たちの周囲にもいますよね。もしかしたら小生もその中の一人かも知れません(笑)。
「相剋」(笠置英昭さん)は読物としてズバリ面白かったです。
「マッチ箱のような世界」(末次鎮衣さん)は文章が澄んでいますよね。物語的には何ということもないのですが読んでいて心が洗われます。三木卓の作品を思い出しました。このような体験、小生にもあるんですよ。だから余計心を打たれました。
「風が運んだ物語」(川崎彰さん)は100枚くらいの作品でしょうか? 内容としては面白いのですが推敲が足りない気がします。もっと文章を整理したらいい作品になると思います。変換ミスもかなり目立ちます。構成にも一工夫欲しいところです。タイトルも思い切って「十九歳の春」とか、具体性があっていいのではないですか。そういえば中上健次の小説に「十九歳の地図」とかありましたよね(記憶は曖昧ですけど?)参考になさてはいかが?
「猫」(後藤克之さん)は一コマの作品ですがピンと糸が張って心理小説と申しましょうか、それとも転寝している時に見た夢かな?「吾輩は猫である」の猫とは違ってコワイ猫でしたね。このような猫、小生の界隈にもいるんですよね。
後藤さんは毎号に巻頭言をお書きになっています。今号はその特集を編んでくれています。うんうん、一つ一つ意義がありますね。こういう短文ってなかなかむつかしいですよね。どれもが簡潔に出来上がっていて惚れ惚れとします。
さあ10号までが順調に出て下地はできました。あとは全国同人雑誌賞、まほろば賞・・・に挑戦ですね。ご健闘を祈ります。