FC2BBS

28240
江古田文学 - hazanyosi
2024/07/21 (Sun) 09:55:55
「江古田文学」1を久しぶりに読みました。116号は特集として「境界から世界を見つめる」というとテーマで編まれていました。小生が読んだのは学生さんの作品(ルポ)で「死とともに生きる」という伊藤絵梨さんの奇妙な作品でした。奇妙なというのは語弊があるかもしれませんが、母の親しい友の死と生の世界に遺された自分と母親の関係を注釈つけて細かく描いていて考えさせられました。部分的には小説としても読めます。とても新鮮に感じられましたが、死んだ母親の友人が果たして誰(何者)なのか、彼が生きている時に三人であちこち泊まり込みで旅行などするのですが、たとえば彼の誰もいない田舎の実家だったり、やさしいその母親の友人の描き方は読者にもじかに伝わってくるのですが、やはり彼が何者なのか、最後まで分かりませんでした。もしかしたら別れた父親? それとも母の恋人ないし愛人? 赤の他人でないことは確か。ここに読者として納得がいきませんでした。テーマそのものは死んだその人(彼)と遺された母親と娘の「わたし」との境界線があぶりだされているのですが、その喪失感は見事に表現されているのですが、それでいいのかなあ・・・という不満は残ります。小生の読み方が間違っているのでしょうか?
「死とともに生きる」は小生の胸に大きな波紋を投げかけて去りました。




まほろば賞候補作品を読む - hazanyosi
2024/07/16 (Tue) 21:28:07
第18回まほろば賞候補作品が揃いましたね。候補作5編を読み終わりました。候補作は下記の通りです。

「水路」(「あるかいど」)渡谷邦さん。
「お仙ー番長更屋敷」(「総」高見直宏さん。
「神女(かみんちゅ)」(「四人」)大城由乃さん。
「父のマリア」(「ガランス」)入江修山さん。
「黄昏の朝」(「文宴」)藤原伸久さん。

ずばり小生は「神女」を推します。女性の霊媒者をめぐって起こりうる超現実の世界に沖縄の諸問題を包含して迫力がありました。少し長すぎる感じもしますが読み応えはありました。導入部に不満が残りましたがテーマはしっかりと捉えています。
「父のマリア」もキリスト教と薬売りの土着の信仰が災いして男女の恋が裂かれるのですが、やや古いかな?小生的にはいい作品だと思いますけど。
「お仙ー番長更屋敷」は時代小説ですね。幽霊のハナシで面白いのですが、純文学という観点から言って
少し落ちるかな?小説としてはうまいですよね。うまさが逆に欠点にもなっているのはどうしてなんでしょうね。
「黄昏の朝」にも同じことが言えるような気がします。文章もよどみなくは知っているし、うまいのですけどね。何かなあ、心に訴えるものがないのですよね。
「水路」は他の作品と比べてレベルがやや落ちる感じです。これは好みの問題もあるでしょうが、拡がりが感じられません。或る意味、作者は読者との対決ですからね。読者を黙らせるくらいの力が必要なのかも?

さて、結果はどうなるでしょうね。楽しみです。
秋号には結果が掲載されているはずです。



「全作家」拝受 - hazanyosi
2024/07/09 (Tue) 21:18:00
「全作家」124号をご恵贈いただきました。
今号より編集体制も変わられましたね。昔からの知り合いも少なくなりました。印刷もこれまでとは違って、アマゾンのPODを採用するそうです。これだと必要冊数だけの印刷製本になり、費用も安上がりですって。
同人費もこれまでの三倍も安くなり、新しい同人、特に若い同人も入りやすくなったそうです。ちなみに同人費は(年4回発行)6,0000円。掲載費も安上がりですって。これまでに比べるとややシンプルですが、作品が勝負ですよね。
知り合いの森田高志んも入会されています。今号の掌編小説特集に「コリウス」という作品を発評しています。いい作品です。こういうところで揉まれたら素晴らしい書き手になると思います。最初の頃の彼の作品とは比べ物にならないほどに成長しているようです。よかった。知り合いがこうして活躍している姿を知ると嬉しくなりますね。
小生は白内障の一回目の手術を終えたばかりで、まだ全部は読み切れていません。これからゆっくりと読みたいと思っています。取り急ぎ御礼まで。


「九州文學」2024年夏号を読む - hazanyosi
2024/07/05 (Fri) 13:36:23
久しぶりに本誌を手にしました。以前に比べると外観の見栄えはよくなったと思いますが、問題は作品の質ですよね。それがどうなのか?

同人雑誌が仲良し会になっては作品の質は経験から言ってダウンするものなんですよね。誰かが鬼になることが必要でしょう。鬼になる人います? たぶん、いないでしょう。

発表された作品の中では佐々木信子さんの「余生」が秀逸ですね。さりげなく日常の高齢者夫婦のことを描いているのですが、特に表現力がすぐれています。この人はかつて北日本文学賞を受賞したことがありましたが、その頃に比べると、やや感覚的に落ちたかあなと思いますが、その分だけ巧者になっていますね。余生の意味も夫婦の生活情況も達者に描かれているのですが、何か物足りない。芸術的な観点から言うと、起承転結の結、つまり盛り上がりが欠けていませんか? 創りが欲しいのですよね。ですからちょっと面白い高齢夫婦の生活報告書で終っていませんかね。ここ、惜しいですよね。これでいいと言う人もいるでしょうが、そんな言葉に甘えずにもう一つランクアップした作品を期待しましょうか。

森美樹子さんも北日本文学賞の奨励賞になった方ですよね。「星月夜」は甘いですよね。すぐれた作品を七期の時に発表したこともあったのですが、レベルが落ちています。これ、自己満足の作品ではないですか?緊張感を失っていますね。合評会でそんな意見がでないのかなあ・・・。鬼、というよりも他人の作品を熱心に読むことなんかしないのだろうな、きっと。

緑川すゞ子さん、連載していたのですか。この方も確か「闇夜のルパン」で季刊文科に転載された経験をもつ人ですが、その後いい物を書いていませんね「海峡派」にも作品を発表しているようですが、「闇夜のルパン」を超える作品はありません。どうしたのでしょうね。やはり発表することで自己満足しているのでしょうか。それとも仲間褒め? 仲間に褒められていい気になっていては前進しませんよね。余計なことでしょうが、これホンネです。仲間褒めは絶対信用しないことです。若い時、よく言ったものです、読んでいない時には褒めちぎっとけ、と。 褒め殺しですな。

その他に心に残る作品はありません。
「文芸思潮」92号が送って来たので開いてみたら、福岡の「ガランス」31号の入江修山さんの「父のマリア」がまほろば賞候補として転載されていました。読んでみて感動しました。作者についてはまったく知らない人ですが1951生まれですからそう若くはありません。文章もぎこちないのですが、一生懸命に書いたという印象はあります。手先の器用さではなく、命と対峙して人間を重く描いています。ここが重要ですよね。あらためて文学とは何かを考えさせられます。


「海」拝受 - hazanyosi
2024/06/23 (Sun) 10:48:22
大宰府市で発行されている「海」第99号を拝受しました。(今号より第二期を改め通巻で表示するようになったとか。)
小説では「階段」(高岡啓次郎)、「涸川」(有森信二)、「続・幼年期ー郷原直太の場合 にくだん」(中村太郎)、「私と娘の関係」(牧草泉)、「パリは何時も曇っている」(井本元義)、それに招待席で「納戸」(波佐間義之)が掲載されています。それぞれ同人のレベルは高いですね。女性が一人もいないのは普通考えられないと思うのですがどうしてかな?詩を発表している人も5人中2人ですから少ないですね。本筋とは関係ないのですが、こういう誌も珍しいですね。
因みに招待席は同人以外の誰でも投稿できるそうですよ。編集部がOKを出してくれれば無料で掲載してもらえます。自分たちのレベルアップを図る一環で企画されているそうですが、これもいいアイデアですよね。少し毛色の違った作品が持ち込まれれば刺激になるでしょうよ。よろしければあなたも出してみられたら?
招待された方も刺激にはなりますよ。いろいろと違った意見も聞くことができるし・・・。
やまなし文学賞募集 - hazanyosi
2024/06/17 (Mon) 09:55:19
樋口一葉記念、第三十三回「やまなし文学賞」の作品募集が行われいます。30枚~80枚の作品で締め切りは11月30日です。
選考委員:町田康、堀江敏幸、青山七恵
賞金:100万円 佳作2編:それぞれ30万円
※受賞作及び佳作は山梨日日新聞紙上に掲載され、作品集として刊行されます。
詳細は「山梨県立文学館」のホームページを検索して下さい。電話での問い合わせ→055-235-8080
あなたの吉報をお待ちしています。
「林芙美子文学賞」募集 - hazanyosi
2024/06/10 (Mon) 21:11:04
北九州市主催の第11回「林芙美子文学賞」の募集が発表されました。

締め切り;9月13日(金)。
枚数;400字詰原稿用紙で70枚~120枚以内。
賞金;大賞100万円 佳作10万円。
※同人雑誌に発表されたものも可。
奮ってご応募ください。

詳しくは「応募要項」をご覧ください。
(応募要項は当方にも用意していますのでご連絡していただければ郵送します)。


「血と水の一滴」を読む - hazanyosi
2024/06/06 (Thu) 21:00:35
沖縄に散った青年軍医、森本義丈中尉の手記(日記)を基に書かれた「血と水の一滴」を読みました。これはブックオフで200円で買ったものでしたが、読み応えがあって感動しました。こんな本があるとは知りませんでした。2014年に出されたものですが、まったく書評にもならなかったですよね。小生が知らなかっただけかな?
作者は芹澤健介という人だけど、この人も知らなかった。どうやら初めての作品らしいです。この作品を監修した人は大林豁史という人。小説作品に監修がいること自体も珍しいですが、実はこの人の叔父さんが主人公の森本中尉なんですって。自分史ならぬ他人史(身内史)と言ったらいいのでしょうか、ノンフィクションのような迫力があります。ストーリーはフィクションとあとがきには書かれていますが、歴史的史実は正確ですからどこをとっても破綻がないです。大学を卒業して25歳で陸軍医として軍の経験もなく沖縄戦に命をささげた人の気持ちがそっくり読者に伝わってきて、涙を零さずにはいられませんでした。
戦争はいけません。今の日本の政権はアメリカに引きづられて軍備を整えているような気配を感じますが、いけませんね。若い人もこの本を読んで、戦争とは何かを真剣に考えてほしいと思いました。結局、一番犠牲になるのは若い人ですからね。大西巨泉さんが言っていましたね。「老人が戦争を決めて中年が指揮して死ぬのは若者だ」と。若者だけではなく、女性や子供にも被害は免れませんからね。

「アビラ」拝受 - hazanyosi
2024/05/28 (Tue) 09:55:36
個人詩集「アビラ」18号を拝受しました。宮崎県の後藤光治さんの個人誌です。氏は「龍舌蘭」の同人でもあります。教師をなさっていた(いる)方でしょうか、エッセイ「鬼の洗濯板」は学校の現実、教育再生への視座に対して提言をなさっています。ここでは具体的な例として「尊厳」について展開さあれています。小生も実は体育の教師に憧れて途中まで頑張ってきたのですが父親の急死で進路変更をせざるを得なかった訳ですが、今では教師にならずによかったと思います。教師は国の方策にガンジガラメに縛られて、傍から見ていたような教育現場ではないそうですね。教師の資格があっても別の仕事に変更する人や就職しても退職していく人が多いのだって。精神的におかしくなっていく人も少なくない、とか・・・。人間って一体何なのでしょうね。考えさせられました。
「絵合せ」拝受 - hazanyosi
2024/05/22 (Wed) 12:04:29
福岡市西区で発行されている「絵合せ」第8号が発売になりました。順調ですね。内容も同人誌にふさわしく充実していまます。

巻頭言:現在・過去・未来・・・後藤克之
詩:ピンセット・・・・・・・・岬龍子
随筆:本当の父親・・・・・・・末次鎮衣
小説:木匠さん・・・・・・・・波佐間義之
   お静津の霊魂・・・・・・笠置英昭
   あしたの風を聴く・・・・川崎彰
   見えない斜面・・・・・・後藤克之

随筆「本当の父親」は簡潔で文章のキレがいいですね。このまま掌編小説としても十分読めます。
小説「お静の霊魂」は郷土史を基にして物語を創作したものでしょうか、骨っぽい感じがします。もう少し説明が欲しいですね。血肉が付くと読者を納得させる作品になったでしょうに。
小説「あしたの風を聴く」は作品としてはイマイチですね。意識の流れ的な手法を取り入れたのかなと思って読んだのですが、文章にメリハリは必要ではないでしょうか? 枝葉を落として自分の描こうとする世界を浮き彫りにした方がよかったと思うのですが、どうでしょうね。平坦な道を淡々と歩いているような気がして作者は何を言いたかったのか、ぼやけてしまったまま、長編の一部みたいな気がしましたが、連作のつもりかな? 文章の力は感じられますので今後に期待します。
小説「見えない斜面」は戦前のハナシでしょうか。田中義一とか石橋湛山とかの政治家の名前が出てきまして、タイムスリップしたような作品ですね。戦中戦後の作家の作品を読んでいるような気がしたのですが、考えて見れば今現在がそういう時代に逆走しているという人もいるし、そこを狙ったのかなとも思いながら読みました。作者の言わんとするところは十分に理解できましたが、もう一つ食い足りない気がします。説明不足な点と会話に頼り切っているところかな?
詩「ピンセット」は医療現場で働いた人の作品でしょうか、言葉尻から金属に付着した薬品の匂いがしてくるような印象をもちました。人生って「やんごとなき物語」でしょうね。
巻頭言「現在・過去・未来」は詩として読んでも面白いですね。流れ去った風景、目の前の風景、迫りくる風景・・・文学はまさに時間、空間の芸術ですね。
 
 本誌は年3回発行、年間購読者を募集しています。
 税、送料込みで2,000円。同人も募集中です。
 発行所:電話・FAX 092(834)7871 (後藤克之)
Re: 「絵合せ」拝受 - ごとう
2024/05/23 (Thu) 20:26:43
絵合せ第8号、ご紹介いただきありがとうございます。
今回も作者個々の思いの詰まった力作が揃いました。
同人の皆さんのお陰で成り立つ同人誌です。
ありがとうございます。