「九州文學」2024年夏号を読む - hazanyosi
2024/07/05 (Fri) 13:36:23
久しぶりに本誌を手にしました。以前に比べると外観の見栄えはよくなったと思いますが、問題は作品の質ですよね。それがどうなのか?
同人雑誌が仲良し会になっては作品の質は経験から言ってダウンするものなんですよね。誰かが鬼になることが必要でしょう。鬼になる人います? たぶん、いないでしょう。
発表された作品の中では佐々木信子さんの「余生」が秀逸ですね。さりげなく日常の高齢者夫婦のことを描いているのですが、特に表現力がすぐれています。この人はかつて北日本文学賞を受賞したことがありましたが、その頃に比べると、やや感覚的に落ちたかあなと思いますが、その分だけ巧者になっていますね。余生の意味も夫婦の生活情況も達者に描かれているのですが、何か物足りない。芸術的な観点から言うと、起承転結の結、つまり盛り上がりが欠けていませんか? 創りが欲しいのですよね。ですからちょっと面白い高齢夫婦の生活報告書で終っていませんかね。ここ、惜しいですよね。これでいいと言う人もいるでしょうが、そんな言葉に甘えずにもう一つランクアップした作品を期待しましょうか。
森美樹子さんも北日本文学賞の奨励賞になった方ですよね。「星月夜」は甘いですよね。すぐれた作品を七期の時に発表したこともあったのですが、レベルが落ちています。これ、自己満足の作品ではないですか?緊張感を失っていますね。合評会でそんな意見がでないのかなあ・・・。鬼、というよりも他人の作品を熱心に読むことなんかしないのだろうな、きっと。
緑川すゞ子さん、連載していたのですか。この方も確か「闇夜のルパン」で季刊文科に転載された経験をもつ人ですが、その後いい物を書いていませんね「海峡派」にも作品を発表しているようですが、「闇夜のルパン」を超える作品はありません。どうしたのでしょうね。やはり発表することで自己満足しているのでしょうか。それとも仲間褒め? 仲間に褒められていい気になっていては前進しませんよね。余計なことでしょうが、これホンネです。仲間褒めは絶対信用しないことです。若い時、よく言ったものです、読んでいない時には褒めちぎっとけ、と。 褒め殺しですな。
その他に心に残る作品はありません。
「文芸思潮」92号が送って来たので開いてみたら、福岡の「ガランス」31号の入江修山さんの「父のマリア」がまほろば賞候補として転載されていました。読んでみて感動しました。作者についてはまったく知らない人ですが1951生まれですからそう若くはありません。文章もぎこちないのですが、一生懸命に書いたという印象はあります。手先の器用さではなく、命と対峙して人間を重く描いています。ここが重要ですよね。あらためて文学とは何かを考えさせられます。