「海峡派」第164号を拝受しました。北九州市で唯一の同人誌です。同人数22名。ひところより少し減ったみたいだけどレベルは高いです。
今号は巻頭にシナリオ「青い空」が掲載されています。これは公害に苦しめられていた頃、或る地区の主婦たちが立ち上がって活動したハナシのようですね。確かに新聞にも話題になったことがあります。八幡の公害を写真集を出した林えいだいさんもこのシナリオに登場するようです。舞台になったら面白いでしょうね。小生も観てみたいと思いました。
小説では「結婚の報告」が面白かったです。面白かったというよりは深刻なテーマを孕んでいますよね。婚約者の正史が奈津を伴って奈津の実家に挨拶に行く訳ですが、奈津は実父に中学生の頃から十一回も相姦されていて、そのことで奈津の精神は普通ではなくなり、実父を告発すると言い出すのです。そのこと家族も知っていて家族とも揉めるのですが、実父は悪かったと誤ったことで正史と奈津は戻って行くというそれだけの短編ですが、読者は焼き刃を突き付けられたような衝撃を受けます。正史もえらいが奈津もしっかりしていますね。(なぜ今ごろになって告発とかいう問題も残りますが)たぶん、ふたりは今後親戚や世間との関りを断ってお互いを支え合いながら静かで平和な家庭を築いて行くのではないかとエールを送りたくなります。
この作者はある文学賞に「聖トンボの被昇天」という作品を応募していました。これは妊婦が流産しかけて苦しんでいるところへ一人の男が現れて助けたところから夫婦と見間違われ、いつのまにか主産にまで立ち会わされるという多少ユーモラスに描いた作品でした(細かい部分は忘れました)が、それにはいろいろな事情が丁寧に書き込まれていて、説得力もあり小生は◎をつけて優秀作はこれしかないと主張したのでしたが、他の二人の委員は△だったことを覚えています。読む人によってこんなにも違うのかと思って驚いたこともありましたが、「結婚の報告」も評価が割れるのではないかと思うのですが、いかがでしょうね。もちろん読む人によって評価が違うのは承知の上ですが、実際に作品を書いた経験のある人とない人は観点が少し違うようですね。
(もしお気に障るような方がありましたらごめんなさいね。あくまで小生個人の意見です。)