「文芸思潮」第96号が発行されました。
今号は同人雑誌優秀賞「まほろば賞」候補の作品が五扁掲載されています。五編の中には「海」同人の井本元義さんの「ルーアンの復讐」がノミネートされています。これは関東大震災のどさくさに紛れて憲兵の甘粕正彦大尉が無政府主義者の大杉栄とその愛人(伊藤野枝)と子供を殺害すると言う残虐な事件を取り扱ったものです。甘粕は一応裁判で刑をうけるのですが三年で釈放されてパリに渡るのですが、そこには林という大杉と仲のよかった画家がいて、彼が大杉の仇討ちを試みるという大胆な筋書きです。林という画家の視点で描かれていて、サスペンスに富んだ作品になっています。読み応えがありました。時代背景、事件そのものの参考文献も多く、よく調べられていますね。おそらく井本さんの「ルーアンの復讐」が受賞と思いますが、彼は一度「まほろば賞」を受賞しているのですよね。ですからここをどう評価するか、分かれるでしょうね。同じ人に二度もやることが可能かな?というのが小生の意見です。