五十嵐勉著「流謫の島」を読みいました。この作品は唱和54年、「群像新人賞(長編の部)」の受賞した作品だったのですね。約600枚、枚数だけではなく内容的にも凄く重量感のある作品でした。母親は塩釜の岬で投身自殺をして、遺された双子の兄弟はそれぞれ島の家に引き取られて育てられます。家庭環境の総意から二人は互いに背を向け合って大人になって行くのですが二人の共通するのは「捨て子」というコンプレックス。二人とも学業成績は良かったのですが、一人は早稲田大学に進学するけれどももう一方は高校の時に恋人を作り、生きることが厭世的になり恋人を殺して自分も死に、二人の宿命的な愛と残酷さを克明に描いて感動させられました。人間は環境、人との出会い、自身の性格で運命が解かれるのですよね。説得力はあります。早稲田大学へ入学した方は高校の時に山本という先生に影響を受けて自分も教師になろうと決意して将来に望みを託して結びとなるのですが、恋人を殺して自死した方の生き方には同情を奪われます。そこに辿り着くまでにはいろいろ詳細な心の葛藤があるのですけど、いたたまれない気持ちの動揺を感ぜずにはいられませんでした。読み終わってひどく心は重く、悲しくなりましたが、読み応えのあるすばらしい作品でした。