「全作家」短編小説の集い、をご恵贈いただきました。これまでの誌とは違って分厚くなっています。22巻だそうですが気付きませんでした。そんなに出ていたのですね。作品は19編掲載されています。知り合いの森田高志さも「独楽」という作品を発表しています。323ページの作品集で期待して手にしたのですが、校正もイマイチ。編集委員も編集方針が変っているみたいで、「全作家」らしくない誌になり下がったような感じがします。
森田さんの「独楽」は浄水器のセールスマンをしている「私」が隣の未亡人に声をかけると買ってくれるということになり、急に親しくなって親密な関係にある寸前で未亡人は消えてしまうというハナシ。未亡人は浄瑠璃を習っていたらしく、未亡人の家でそのビデオを見せられ、浄瑠璃の語りが作品に書き込まれていて、読者はいささか退屈します。タイトルもその浄瑠璃から採られたものらしく、何が書きたいのかなあ・・と首をかしげてしまいました。前半はいいのですけどね。短編として推敲が足りない気がします。
陽羅義光さんの「帰郷」はベテランらしく面白く仕上がっているのですが、巷に転がっているようなハナシを無理に作っているような気がしてリアリティーを感じませんでした。説明文の後に「そんなことはどうでもいい」という前文を打ち消すような言葉がもう何カ所も出てきて、どうでもいいなら書かないでほしいと読者は不愉快な気持ちになりますよね。
今号に限っては辛辣かもしれませんが「全作家」らしい作品はありませんでした。しいていえば本間真琴さんの「夢の中の家」くらいなか?それも構成がイマイチって感じがします。妄言多謝。