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江古田文学 - hazanyosi
2024/07/21 (Sun) 09:55:55
「江古田文学」1を久しぶりに読みました。116号は特集として「境界から世界を見つめる」というとテーマで編まれていました。小生が読んだのは学生さんの作品(ルポ)で「死とともに生きる」という伊藤絵梨さんの奇妙な作品でした。奇妙なというのは語弊があるかもしれませんが、母の親しい友の死と生の世界に遺された自分と母親の関係を注釈つけて細かく描いていて考えさせられました。部分的には小説としても読めます。とても新鮮に感じられましたが、死んだ母親の友人が果たして誰(何者)なのか、彼が生きている時に三人であちこち泊まり込みで旅行などするのですが、たとえば彼の誰もいない田舎の実家だったり、やさしいその母親の友人の描き方は読者にもじかに伝わってくるのですが、やはり彼が何者なのか、最後まで分かりませんでした。もしかしたら別れた父親? それとも母の恋人ないし愛人? 赤の他人でないことは確か。ここに読者として納得がいきませんでした。テーマそのものは死んだその人(彼)と遺された母親と娘の「わたし」との境界線があぶりだされているのですが、その喪失感は見事に表現されているのですが、それでいいのかなあ・・・という不満は残ります。小生の読み方が間違っているのでしょうか?
「死とともに生きる」は小生の胸に大きな波紋を投げかけて去りました。