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「海」拝受 - hazanyosi
2025/06/19 (Thu) 13:35:37
太宰府市で発行されている「海」第101号を拝受しました。巻頭の「海へのことば」として「こどもの眼 おとなに眼」というエッセー(中村太郎さん)が掲載されています。確かに視点というのは作品を書く上には大事な事ですよね。誰の視点で書かれた物か。これを読む上においては小生は特に強く感じますね。視点の違いによって作品の出来具合も当然違ってきますよね。中には平気な人もいるようですけど。「私の顔が赤く染まった」なんて書いた人がいましたが、「私」を主人公にしてそういう表現は少しおかしいですよね。気持ちは解りますが自分の顔色が見えるはずもありませんよね、鏡を見ないことには。視点のブレということもよくありますね。小生も指摘を受けたことがありました。視点は文章を書く上での大事なことですよね。
小説「凍裂」(高岡啓次郎さん)は第10回銀華文学賞の特別賞を受賞した作品ですよね。もう十年以上前に発表された作品ですよ。その頃の「文芸思潮」で読んでおりました。改めて読むとまた新鮮な感じがします。少し書き直しされたのかな?キメ細かい文章がいいですね。
この他に性老残夢」(井本元義さん)、「億年の光」(有森信二さん)がいいですね。「蝶が舞うように」(川原広一郎さん)もおもしろかったですよ。この作品は原稿の時に読んでいました。「九州文学」をしている時に送られてきたのでしたっけ。記憶にあります。あれから何回も書き直されたのでしょうか。うまくまとまっていますね。
詩集拝受 - hazanyosi
2025/06/05 (Thu) 21:16:26
後藤光治さんの自選詩集「抒情詩扁」を拝受しました。作者の後藤光治さんは宮崎県の「龍説蘭」の同人で、すでのたくさんの作品を発表なさっています。門外漢の小生に作品評はできませんが、後藤さんの作品は解りやすい詩です。古いという方がいるかもしれませんが、小生は最近の難解な詩よりも後藤さんの抒情詩が好きです。何でもない日常の呟きが美しく飾り付けられています。これでいいのですよね。
「絵合せ」発売 - hazanyosi
2025/05/29 (Thu) 13:19:56
「絵合せ」11号が刊行。順調ですね。
巻頭言「三立交差という手法」(後藤克之さん)は書く物にとっては大いに参考になりますね。三立とは時代、場所、人物を差すことのようですがまったくその通りだと思います。「時・場・人の三立体を親とするならば、筋は子である」とも解いています。なるほど、通俗小説作家からみれば異論があるかもしれませんが、文学全般にわたって見れば基本的な骨組みだと思います。フォクナーはそれに付け加えて「作家に大切なものは観察力、想像力、そして体験だ」と言っていますね。観察力と想像力は追い詰められ、閉塞された状況であればあるほど、人間の物理的な限界を超えて、可能性を開示する(五十嵐勉)と捉えています。こちらの方はやや具象的になりますが、巻頭言の作者が後で述べている「時代・場所・人物の匂いが漂うように、感性を研ぎ澄ましたい」ということの意味はフォークナーの言っていることと繋ぎ合わせることができますよね。書き手にとってはこの感性が必要不可欠ではないですかね。感心しました。

随筆は二編。「多磨霊園にてー太郎に会いに」は小生の知らない世界に案内されたようで新鮮な感じで読み終えました。掌編小説としても読めるのではないですかね。ただ、作者がなぜ「太郎に会いに」というサブタイトルまで付けているのか疑問でした。太郎とは岡本太郎のことで、作者と岡本太郎とのヘソの緒が省かれていますよね。作者は岡本太郎の画いた絵が好きだったのかな?ものすごいファンなのかな?それとも太郎のような画家を夢見ているのかな?単なるアクセサリー?
もう一つの随筆「燃える地域医」は短いながらも内容には説得力がありますね。もっと普遍的に捉えたら更によくなるように(作品として)思いました。

小説は「ガラスの壷」(波佐間義之さん)「落魄の山河」(笠置英昭さん)「自業自得」(川埜邊慎二さん)「星色観測」(後藤克之さん)の四編がありましたが、今回は「自業自得」を取り上げます。
「自業自得」は60枚くらいの作品でしょうか。サラリーマンの職場小説。出入りする商社の女性と結託して上司を色仕掛けで降格させ、仕掛けた部下がその後釜に納まるが、元上司も負けてはいられずに同じ手口で倍の仕返しをして元の鞘に収まるという手の込んだストーリーです。文学という観点からいえば通俗的で、読み物としては面白かったですね。この作者は以前に「セラミックスの恋」を発表していましたが、あの作品に比べると幾分落ちるかなと思いました。「自業自得」は読者よりも作者自身が面白がって書いたのではないでしょうか。それは小生にも経験がありますが、作者自身ほど読者は痛快にはなれませんよね。そうです、リアリティーがついてきません。もっと冷めた視点で書いたら真実味が帯びてくるのでしょうけど、筋の方が先走りしているようで文学から逸脱しているような気がしてなりません。そう感じるのは小生だけでしょうか?作品は書き手と読み手の相互作用によって決まるものですから、客観性を持つこと、これ大事なことでしょうね。


Re: 「絵合せ」発売 - ごとう
2025/06/02 (Mon) 22:46:37
絵合せ第11号、ご紹介いただき、ありがとうございます。情景や心理の描写を丹念に描けるように取り組んでいきたいと思います。
詳細にご講評をいただき、ありがとうございます。同人の皆さんも書き続ける励みになると思います。今後ともよろしくお願いいたします。
訃報「津田さん」 - hazanyosi
2025/05/27 (Tue) 20:38:14
第七期「九州文学」の同人で、俳句作家だった津田富子さんがお亡くなりになっていました。4月13日に電話がかかってきてお話したのが最後でした。その時に肺炎になったと言われていました。声が少しおかしいなと感じたのでしたが退院したばかりだからと聞いていました。退院するくらいなら快方に向かわれたとばかりに思っていたのですが、子供さんからの電話でお亡くなりになったことを知らされました。謹んでご冥福をお祈りいたします。合掌!
「海峡派」拝受 - hazanyosi
2025/05/22 (Thu) 12:58:08
「海峡派」第163号を拝受しました。今号も200ページ近くの小説、詩、エッセー、詩時評、読書日記、語り盆とバラエティーに富んで目を楽しませてくれます。全部はまだ読み切れませんが、印象に残った作品を一つ。
小説「あすなろう」(若窪美恵さん)は学習塾でアルバイトをしている二十六歳の独身女子「わたし」の視点で人と人のつながりをモチーフにした人情話を綴った好編でした。「わたし」は「山根チューター」と書かれたネームプレートをつけていつことから塾生から「ヤマネズミみたい」と言われていることから小説は始まり、塾の教師の一人がお昼の休み時間に外に出て
(たぶん食事のためばかりと思っていたら)とある店で盗撮していたことで警察に捕まり、何の説明もなく塾を辞めるようになったとういう一コマの作品である。全体の経緯はぼかされているが、盗撮した塾の教師の行動は「わたし」や「みどり先生」や「塾長」の言葉の端々から大体の想像は読者には伝わってくる。最近盗撮する行為は欲マスコミを賑わしているので珍しいことではありませんが一般の人間には理解しがたい行為ですね。その行為を想像もできない人たち、たとえば学者とか教育者とか議員とか社会的に地位のある人たちが話題になることが少なくありませんね。この作者もそんな点に違和感や疑義を感じて作品にしたのではないでしょうか。人間って何でしょうね。何がそうさせるのでしょうね。ネットにでている「窃視症」という一種の病気ではないかと作者は推察する一方で、ならば治療する方策もあるのではないかと問題提起しています。まさにその通りなんですが、おいそれと解決策は見当たらないところに人間の持つ何か奥深いものがありそうです。それを追及するのも小説の仕事かもしれませんね。
「草枕」再読 - hazanyosi
2025/05/14 (Wed) 12:50:16
漱石の「草枕」を再読しました。再読といっても小生が独身の頃に読んでいたもので、もうすっかり忘れていました。覚えているのは書き出しの「智に働けば角が立つ・・・・」のその辺りだけでした。改めて読み直して次の言葉にも深く感銘しました。「善は行い難い、徳は施しにくい、節操は守りやすからぬ、義のために命を捨てるのは惜しい」ので「兎角に人の世は住みにくい」ままならぬ(苦痛)ということに繋がるのだろうかと小生は思いました。その為に漱石は「愉快」が必要だと説いています。「愉快」とは詩や画であり芝居であり、いわゆる芸術が身を助けるということを言いたいのでしょうか。いささか観念的、楽天的に思えるけれど、理屈は合ているように小生には思えます。明治初期の作品とは思えぬ近代小説ですね、漱石文学は。もう少し、漱石文学に馴染んで終焉を迎えたいと思っています。

「流謫の島」を読む - hazanyosi
2025/05/05 (Mon) 12:30:25
五十嵐勉著「流謫の島」を読みいました。この作品は唱和54年、「群像新人賞(長編の部)」の受賞した作品だったのですね。約600枚、枚数だけではなく内容的にも凄く重量感のある作品でした。母親は塩釜の岬で投身自殺をして、遺された双子の兄弟はそれぞれ島の家に引き取られて育てられます。家庭環境の総意から二人は互いに背を向け合って大人になって行くのですが二人の共通するのは「捨て子」というコンプレックス。二人とも学業成績は良かったのですが、一人は早稲田大学に進学するけれどももう一方は高校の時に恋人を作り、生きることが厭世的になり恋人を殺して自分も死に、二人の宿命的な愛と残酷さを克明に描いて感動させられました。人間は環境、人との出会い、自身の性格で運命が解かれるのですよね。説得力はあります。早稲田大学へ入学した方は高校の時に山本という先生に影響を受けて自分も教師になろうと決意して将来に望みを託して結びとなるのですが、恋人を殺して自死した方の生き方には同情を奪われます。そこに辿り着くまでにはいろいろ詳細な心の葛藤があるのですけど、いたたまれない気持ちの動揺を感ぜずにはいられませんでした。読み終わってひどく心は重く、悲しくなりましたが、読み応えのあるすばらしい作品でした。
「季刊午前」拝受 - hazanyosi
2025/04/29 (Tue) 21:44:53
「季刊午前」第65号を拝受しました。小説では古木信子さんの「影心中」がまとまっていて面白ったです。古木さんは元民放(熊本)のアナウンサーでしたよね。最近ではあまり書かれた記憶はありませんでしたがまだ続けられているのですね。久し振りにお名前拝見して懐かしかったです。
「影心中」は伝承小説でしょうね。心療内科医の「私」が老人マンションの人たちの診療に出かけて1号館でも2号館でも「自分の影」不思議さを感じる相談を受けるのですが、二人(男女)はまったくつながりはない人同士。二人を認知症のはしりでそういうことを言うのかなと思いましたが、それならそれで納得しますが、この二人が後に神社のベンチ寄り添うように腰かけて死んでいるのですよね。「私」はこの二人の過去の魂に呼び寄せられて心中したように思ってしまうのですが、それにしても不可思議ですよね。警察でも調べようがないじゃないですか。それを神社側が「老楽の恋の成就」のパワースポットに仕立てたというハナシ。リアリティーとか説得力はありませんがハナシとしては面白いですよね。まあこれも老人問題に言及した作品と言えるのでしょうか? もちろん作者が断るまでもなくフィクションとは思いますが・・。
「全作家」拝受 - hazanyosi
2025/04/15 (Tue) 21:47:39
「全作家」125号を拝受しました。字も大きくなって読みやすくなりましたね。内容的には軽くなったような気がします。小説では「逃げ水」(井上岳人さん)が死をテーマに(再就職した霊柩車の運転手が主人公)ユニークに出来上がっていると思いました。人間の死体を扱うことを仕事にしている人って尊敬します。いつもどんな気持ちで仕事しているのかなーって思っていました。小生には出来そうもありませんが、それしか働くところがないなら生きるためにはやらざるを得ないでしょうね。重兼房子さんの芥川賞になった「山あいの煙」が死体焼却場の仕事をしている男が主人公だったですよね。そういう人がいて人間社会は成り立っているのですから貴重です。読み終えてふとそんなことを思い浮かべました。
「九州芸術祭文学賞」作品集を読む - hazanyosi
2025/04/12 (Sat) 13:28:44
第55回「九州芸術祭文学賞作品集」を読みました。当選作は長崎県のきのみやはるさんの「雨粒のゆくえ」でしたが、こんなのが受賞作になるのだろうかと正直疑問に思いました。同性愛(女)で同棲している「私」が「優花ちゃん」との日常描写。優花ちゃんが陰毛を脱毛したという小劇的なところから始まり、自分もどうしょうかと悩みながら日常を送っている心境が吐露され、それと並行して同性愛をしていることを親にはスムーズに報告することができたが、入院しているおばあちゃんにどう報告すればいいのだろうとこれまた悩みながら同棲を続けるというただそれだけのこと。え? これが芸術祭の文学賞? と不満が突き上げてきました。佳作の「ヒアカスミズザサン」(豊島浩一さん)も日記形式で家庭菜園の合間の日常が淡々と綴られているだけ。これで最終選考委員は納得したのだろうかと、もう一度読み直す気にもなりませんでした。目取真俊の「水滴」や箒木蓬生さんの「頭蓋に立つ旗」や岩森道子さんの「雪迎え」のようなレベルを期待していたのですが、これでは北九州代表の「はらぺこな満足感」(相良信樹さん)の方がまだ重みがあったと思うのですが、「植民地主義的な書き方」という痛烈な批判を浴びたそうです。どこがそうなのか、小生には納得がいきません。だって若者が男女関係をいともたやすく結ぶのはどこの国でも同じじゃないですか。カネで肉体関係を結ぶこともあるじゃないですか。その相手がフィリピンの女性だったということで植民地主義的な書き方? なんか分からないです。小生が最終選考委員だったら今回は「受賞作なし」佳作に「はらぺこな満足感」ですな。何か・・?