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「季刊遠近」拝受 - hazanyosi
2025/11/10 (Mon) 20:58:06
「季刊遠近」第91号を拝受しました。同人は14人ですがレベルが高い誌ですね。毎号それを感じます。
今号は「パリの石畳に影ふたつ」(久遠十子さん)が秀逸です。この作者の作品は初めて読むのですが新しく同人になった方でしょうか。他でも目にしてことはありません。感覚的な文章が良いですね。父と母を娘(私)の視点で描いたもので、そんなに斬新な作品ではありませんが読ませます。父が会社を退職して娘とパリに旅行するのですが、娘の立場からすると、本当は父と行きたくはないのでしたが、母のことづけ(離婚)を胸に秘めて行く訳なんです。旅の途中でいつ言い出そうかと娘は苦渋していたが、あるチャンスを捉えてついに言い出す。離婚の理由は父の浮気。父は気が弱いくせに異性に関しては積極的らしく、そのせいで母は精神的な治療を受け続けているのです。父は母からの離婚届けを耳にして固まってしまうのですが、娘の「離婚しても私は娘」と呟きを聞いて「そうか」と項垂れまます。娘と母もそんなに仲がいいわけではないのです。娘には「お父さんは、愛し方を知らない人」という母の言葉がよみがえります。母は泣いているのではなく「まるで諦めと未練を同じ器に注ぎ込んだような声」が娘の心境をよく表しています。父と母と娘の間隔の描き方が絶妙ですね。久し振りに同人誌で素晴らしい作品に出会いました。各同人誌評でも好評を受けると思います。
「サンゾー書評」は相変わらず面白いですね。この方はもともと「毒舌」という印象がありましたが、ひところの「毒舌」は影を潜めましたね。歯切れが悪くなっています。「蛇の生殺し」のようで、もう少し切り込んでくれた方がいいように思います。寄贈される同人誌をいちいち読むのも大変なことですよね。時間もかかるし・・・。
盟友・難波田節子さんは連載物「思い出すま(4)」を書いています。自叙伝ですね。だからでしょうか、切れ味がイマイチって感じですね。自叙伝じゃなくて私小説にしたらよかったのでは? 創りが欲しいと思いました。


「叙説Ⅳ」拝受 - hazanyosi
2025/11/04 (Tue) 20:36:47
文学批評家の同人誌「叙説」をいただきました。今号の特集のテーマは「時間」でした。小説にとって「時間」「空間」は大切な道具ですね。茶園梨加さんの「時間についての一考」が印象に残りました。また柴田勝二さんの「自己という虚像」で平野啓一郎論が大いに参考になりました。平野啓一郎は小生の好きな作家の一人です。「ある男」「本心」を読んでから好きになったのですが、初期の芥川賞を受賞した「日蝕」は何回読んでも分かりませんでした。舞台はフランス。両性具有者が魔女として焚刑に処せられる場面を目撃する経験を回想的に綴った物語らしかったけど、難解な漢語をちりばめた作品だったですよね。あれのどこが良いのかと腹も立ったけど、解説を読んでみると、ああそうだったのか半分は納得しました。それ以降の彼の作品は良いですね。考え方も同調します。彼は東筑高校から京大に進み、作家になったのですが、小生と同じく「北九州市民文学賞」をもらっています。私の方が先輩で、授賞式には私も出席して彼の講演を聞きましたよ。直接お話をする機会はなかったのですが、あの時に好感を持ちました。今、現代作家の中では彼がトップではないですか? まだまだ若いし、これからも良い作品を書くと思います。

第八期「九州文学」拝受 - hazanyosi
2025/10/31 (Fri) 20:08:49
執筆者よりより第八期「九州文学}2025秋・冬号を拝受しました。本人には直接感想文を送りましたのでここでは割愛させていただきます。
小説では「月を掬う」(由比和子さん)、「それぞれの秋」(佐々木信子さん)、「友へ」(森美樹子さん)の女性の作品がそれぞれ個性があって面白かったですね。随想「鮭」(屋代彰子さん)のキリリと引き締まった文章も印象的でした。
「季刊午前」拝受 - hazanyosi
2025/10/25 (Sat) 16:20:07
「季刊午前」第66号を拝受しました。今号は特別企画として「あなたへの手紙」が掲載されています。「あなた」は「彼方」でしょうか。すでに亡くなっている人に対する手紙のようです。「菅原道真さま」とか「大伴旅人さま」とか「千の利休さま」とかありましたが、広橋英子さんの「火野葦平さま」、中川由記子さんの「高橋たか子さま」、脇川郁也さんんの「犬塚尭さま」が印象に残りました。それから「編集後記」(安さん)の「先の大戦終結から80年、私達は破壊と殺戮を伴う戦争には損失ばかりが残り、真実の勝利も国益も幸福も得られないことを知識として学んだ…愚直に『兵戈無用』と唱え続けるしかないと思う」同感ですね。
「江古田文学」拝受 - hazanyosi
2025/09/30 (Tue) 16:04:55
「江古田文学」118号を贈呈いただきました。「九州文学」の頃においでになった関係からの当時の編集者との付き合いから贈ってくれているようですが、当時の編集長はもうお辞めになっているようなので、もうこの辺で縁を切らせてもらおうかと思っています。結構お金もかかるようだし、気の毒に思っています。
正直、失礼かも知れませんが、
小生には余り興味がないテーマが多いのです。小説だけは読みますが、詩や評論まではちょと・・・!
江古田文学賞だけは興味をそそられます。
知り合いの富崎喜代美さんが第4回でしたか、受賞しましたよね。林由佳莉さん、後藤克之さんが最終選考まで上りましたよね。(小生も一回出したことはあるのですが二次予選で敗退)
第24回の江古田文学賞も今号で募集しています。締め切りは本日(9月30日)22時59分まで。メールでOK。
応募される方は急いで下さい。斬新な作品をお待ちしていますということです。




「絵合せ」発行 - hazanyosi
2025/09/26 (Fri) 14:42:05
「絵合せ」12号が届きました。ありがとうございました。順調ですね。頼もしいです。
小説は4編載っています。
「黒船騒動始末記」(笠置英昭さん)は歴史時代小説。手堅くまとめています。「こうして封建制度から近代日本の夜明けを革命ではなく、みずからの意思で、多少の武力衝突があったにせよ、平和裏に四民平等になったことは、日本歴史至上の奇跡と言ってもいい」という伊藤博文の回想は記憶に残ります。
「銀色の翼とお天気病」(末次鎮衣さん)は私小説ですね。自己の内面を鋭く切り拓いていて好編です。小生にも思い当たることがあるのです。小生にもあのギザギザの経験があるのです。歯車ではなく鋸の歯のようなものが頭の中に出てきて、五分か十分で消えるのですが、病院にも行ったことがないし、何が原因なのかも分かりません。たぶん、自分では精神的な負担からくるのであろうと思っていました。現役を引退したらそれもいつのまにか出なくなりました。人に言わせると自律神経失調症だったのでは、と。それもはっきりしたことではありません。芥川の「歯車」もそうだったのですね。感受性の強い人にあらわれるのでしょうか? 文中にある「大勢の中の孤独と、ひとりでいる時の孤独感との違いはある」ように思いますね。説得力があって考えさせられます。こういう細かいところに手が届くのも私小説の魅力なのでしょうか。この作者はまだまだ書ける人だと思いました。
「あの日、下駄を持って」(本多和代さん)のあの日とは長崎に原爆が落とされた日のことですね。女学生の俊子の視点であの日のことを書いた作品ですが、防空壕に逃げ込む時に自分の靴を遊びから帰って来た弟に履かせ、自分は出征している父親の下駄を持って家族で逃げるさまを描いていて、テーマが大きいだけに30枚か40枚では書ききれないでしょうね。これはまだ続くのかな? でなければ尻切れトンボで終ってはもったいないですよ。じっくりと取り組んでほしい気がします。
「紙一重」(後藤克之さん)はホシを追う二人の刑事の心境を描いていてテレビドラマの「相棒」を思い出させました。なるほど、「紙一重」はドラマチックの筋書きで楽しく読まされました。これが文学ということになりますと、小生個人としては何か物足りない気がします。確かに人間を追及していることは理解できます。人生は紙一重ですよね。刑事になるのも殺人者になるのも人間紙一重なんですよね。善人と悪人の差も紙一重なのかもね。そういうところをもう少し深く掘り下げて書いたら更に良くなっていたでしょうね。惜しい気がしました。
「巻頭言」の「人物風景・ある男の一生」は凡人の小生にはちょっと分かりにくかったです。普遍性ということは書く上において大事なことだと思いました。

Re: 「絵合せ」発行 - ごとう
2025/09/30 (Tue) 06:53:30
絵合せ第12号、ご紹介いただき、ありがとうございます。今回も皆さんのおかげで発行できました。
作品について詳細にご講評をいただき、ありがとうございます。こうしてご講評いただくことが、同人の皆さんにとっても励みになると思います。今後ともよろしくお願いいたします。
「海峡派」拝受 - hazanyosi
2025/09/17 (Wed) 14:26:04
「海峡派」第164号を拝受しました。北九州市で唯一の同人誌です。同人数22名。ひところより少し減ったみたいだけどレベルは高いです。
今号は巻頭にシナリオ「青い空」が掲載されています。これは公害に苦しめられていた頃、或る地区の主婦たちが立ち上がって活動したハナシのようですね。確かに新聞にも話題になったことがあります。八幡の公害を写真集を出した林えいだいさんもこのシナリオに登場するようです。舞台になったら面白いでしょうね。小生も観てみたいと思いました。
小説では「結婚の報告」が面白かったです。面白かったというよりは深刻なテーマを孕んでいますよね。婚約者の正史が奈津を伴って奈津の実家に挨拶に行く訳ですが、奈津は実父に中学生の頃から十一回も相姦されていて、そのことで奈津の精神は普通ではなくなり、実父を告発すると言い出すのです。そのこと家族も知っていて家族とも揉めるのですが、実父は悪かったと誤ったことで正史と奈津は戻って行くというそれだけの短編ですが、読者は焼き刃を突き付けられたような衝撃を受けます。正史もえらいが奈津もしっかりしていますね。(なぜ今ごろになって告発とかいう問題も残りますが)たぶん、ふたりは今後親戚や世間との関りを断ってお互いを支え合いながら静かで平和な家庭を築いて行くのではないかとエールを送りたくなります。
この作者はある文学賞に「聖トンボの被昇天」という作品を応募していました。これは妊婦が流産しかけて苦しんでいるところへ一人の男が現れて助けたところから夫婦と見間違われ、いつのまにか主産にまで立ち会わされるという多少ユーモラスに描いた作品でした(細かい部分は忘れました)が、それにはいろいろな事情が丁寧に書き込まれていて、説得力もあり小生は◎をつけて優秀作はこれしかないと主張したのでしたが、他の二人の委員は△だったことを覚えています。読む人によってこんなにも違うのかと思って驚いたこともありましたが、「結婚の報告」も評価が割れるのではないかと思うのですが、いかがでしょうね。もちろん読む人によって評価が違うのは承知の上ですが、実際に作品を書いた経験のある人とない人は観点が少し違うようですね。
(もしお気に障るような方がありましたらごめんなさいね。あくまで小生個人の意見です。)

「あかきの」拝受 - hazanyosi
2025/09/09 (Tue) 22:11:54
山口県宇部市で発行されている「あかきの」第12号を拝受しました。いつもありがとうございます。
掌編連載の木澤千さんの「ひぐらし亭春秋」はいつも楽しみながら読ませていています。今号も「絶筆五首」と「したきりすずめ」の二編が掲載されています。これは第七期「九州文学」で発表されていたを改稿されたものです。どちらも小味の利いた作品です。掌編をきっかり書ける人は何を書かせてもうまいですよね。基本(起承転結)がしっかりしているから安心して読めます。この二つの作品の他に木澤さんは「占い」という短編を発表しています。佳品です。会社を定年して妻を亡くした「彼」が寂しさを忘れる為に近くを散歩していて公園で五歳の子供に出会うのです。子供の母親はパチンコに興じていて「じいちゃん」と「彼」に呼びかけて二人はお互いの孤独から交友がはじまるのですね。そして子供を彼は自分の家に連れて行くのですが、一方では母親は自分の子供が誘拐されたと警察に連絡し、そして誘拐犯に「彼」は仕立て上げられるのです。「彼」は新聞の占いをいつも読んでいて、その日までの出来事が不思議と当たるのですよね。それがこの作品のモチーフとなっています。まあ占いを「彼」が信じている訳でもないのですが、そういう事って日常よくありますよね。ここでは気の弱い「彼」という人間が丁寧に描かれていて感動しました。
他には手記で「私の老々介護」(野村英昭さん)に心惹かれました。「心に残る人」(高瀬啓子さん)の中にこういう人生訓めいたものが人の口で語られていましたのでメモしました。「人には三命がある。運命・職名・寿命。三命は逆らわずに受け入れることが大切」と。初めて目にしたのですが、なるほどと考えさせられました。
「照葉樹」拝受 - hazanyosi
2025/09/06 (Sat) 10:30:14
「照葉樹」第28号を拝受しました。
主宰の水木怜さんは心臓の手術、低血圧で倒れて肋骨を骨折されて編集に苦労されたそうですね。満身創痍のなかで発行、感慨深いものがると思います。小生にも似たような経験がありますのでその気持ち理解できます。同人雑誌とはいえ、約束事はきちんと守りたいものですよね。それが同人に対する信頼感となってゆくのですよね。なかには確かに無理解な人もいますけど、そんな人はどこの、何の世界にもいますよね。
作比では水木怜さんの「ストーリー・上」が自分史というか私小説的なできばえでリアリティーを感じました。これはどうやら連載になるようですね。小生と同じく彼女も後期高齢者、ぼつぼつ人生の締めに取り組むのかな? 最後には自分を遺したいですよね。生きた証を! 小生も構想を練っているところです。でも、客観的に描けるかどうかが問題ですね。「ストーリー・上」はそういう意味では自分を客観視しているように感じますが、これから先、どうなるか楽しみですね。「自分史」がいつの間にか「自慢史」になるのですよね。以前に自分史の講座を受け持ったことがあるのですけど、書かせてみるとみんな「自分史」ならぬ「自慢史」に自分を美化するのですよね。そういう気持ちは解らないこともありませんが読ませられる方は感動はしませんよね。小生がひねくれもの?
他に読むべき作品はありませんでした。
「龍舌蘭」拝受 - hazanyosi
2025/09/04 (Thu) 13:49:22
「龍舌蘭」215号を岡林さんよりご恵贈いただきました。「龍舌蘭」は「九州文学」同じく昭和13年の創刊ですね。まもなく90年に到達します。何回か挫折しかけては続刊していまして、岡林さんになってからは順調に年3回発行なさっています。小生も黒木淳吉さんの追悼文を頼まれて書いた経緯がありまして、あれ以来ずっと送っていただいております。
今号は鮒田トトさんの「揚々」が再掲されています。彼女は若くしてお亡くなりになっていますが期待される書き手でした。九州芸術祭にも確か佳作になられていたと記憶しています。「拗拗」もそれに劣らぬ快作ですね。特に一気に畳み込んでいくような文章のキレ味がいいですね。これは彼女独特のものでしょう。「拗拗」の最後が少し尻切れに終わっているように思いました。もう一工夫あれば更にいい作品になったことでしょうね。
他に鳥海美幸さんの「カメ」はうまいですね。山内スリンさんの「鬼神」のような小手先のうまさはないけど初々しさに惹かれました。この方の作品を読むのは初めてです。その所為かも知れませんが、かなり年配になってから書き始められたのでは?
随筆では岡林稔さんの「この暑さの中で悶々と」が同誌に掲載されていた特攻隊の心情に対して問題提起されていて考えさせられました。これは「九州文学」の火野葦平さんを戦争作家とレッテル通りに認めるべきかどうかの問題と同じだと思います。葦平さんはヒューマニストですよ、と小生は思っていまして、そのことを岡林さんにメールしたら彼も小生の意見に賛成して下さいました。そうです、あの時代ですからね。葦平さんも軍の検閲に精一杯に抵抗したような箇所を「麦と兵隊」で探すことができたこと、これも同意見でした。暗号のようなものですよね。特攻隊に組み込まれた人も本心から死んでいった訳ではないでしょう。それを美化した作品もあるのですよね。
同人の足立正男さん、お亡くなりになったのですね。謹んで哀悼の意を表します。